街乗りローディーが体験した初めての立ちごけと走馬灯の巻
ロードバイクに乗っている人なら一度は経験しているだろう。
フラットペダルからビンディングペダルに変えた時はビビッていたが、
意外と大丈夫なもんだなと自分の身体能力を過信していた。
信号で止まる時には左のビンディングを外す。
いつもどおり左のビンディングを外して止まろうとした際、
なぜか右側にバランスを崩す。
何も考えずに右足で踏ん張ろうとするろっくさん。
しかし、右足はビンディングペダルに固定されたままだ。
やっちまったな～！
芸人クールポコさんのギャグが頭をよぎる。
なんて悠長なことは言ってられない。
パニック状態に陥った僕の頭はこんなことへと続く。
楽しかった修学旅行
悔しかった運動会
地面が近づいている！
右足のビンディングを解放することに集中しろ！
今日 ぼくたち わたしたちは 新しい世界へ旅立とうとしています
戻ってこい！
今の状況での新しい世界とは中学校のことではない！
お父さん お母さん 育ててくれてありがとう！
それは本当にありがとう！
走馬灯とはこういうことか。
一瞬の間に小学校の呼びかけまで舞い戻る。
走馬灯【そうまとう】過去のことを次々と思い出す様子。
我に返った僕は地面に右手をついて危険を回避するが、
体重がかかった手首に痛みが走る。
信号待ちの一番前に出た瞬間の出来事。
痛さと恥ずかしさと愛しさとせつなさと心強さとが入り混じる。
今自分に課せられた課題は、
信号が青になる前に立ち上がらなければならないことである。
目の前で倒れたローディーを堂々と車で引く人はいないだろうが、
新しい世界へ旅立ってしまうことが頭をよぎる。
そこからの動きは素早かった。
右足を解放した僕は自分の体より先に
自転車の状態を確認する。
ブレーキのところに擦り傷がある。
自分の右手首の痛みよりも痛い。
忘れた頃にやってくるこいつに
次は負けまいと思う今日この頃であった。
